最後に祝ってもらったのは、いつだったろうか?
もう正直忘れた。
だってボクの誕生日は、あの子の命日だから。
あの子が死んでしまった日だから。
あの子のことだけ覚えているからいい。
あの子のことだけ覚えていればいい。
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「ちょっと、レイン、レイン?…レインってば!」
呼ばれた。
覚醒する。
「んあー…、うぇ?なんで居るんですかー…?」
ボクは正直、寝起きが悪い。
今も凄くぼーっとしてるし、目の前に居る彼女がようやく今はっきり見えてきたところだ。
撫子くん。我らがクイーン。じゃじゃ馬姫さま。
というか、ここはボクの部屋なんですけどー…。なんで居るんですかねー…
「目が覚めたなら行くわよ!」
どこにですかー…、なんてぽそぽそと行ってもクイーンは聞かない。
そのまま、ボクは彼女の部屋に連れてこられた。
「あのー、撫子くんー?ここって君の部屋ですよねー?」
「そうよ。ほら、座って。」
恐らくビショップくんに用意してもらったはずの簡素だがセンスのいいテーブルとイスが用意されている。
そこに座ると、ちょっと意味がわからないくらい、この世界ではめったに食べられないはずの様々な種類の料理がでてきた。
「あの…撫子くん?一体これはどういう…?」
「今日は誕生日でしょう。あなたの。」
「あれー?ボク言いましたっけー?」
「聞いたのよ、鷹斗に。悪い?」
「悪くはないですけどー…。あー、ボク、仕事残ってるんですよー。だからちょっと今日はー
「嘘はよくないわよ、レイン。今日は仕事がないんでしょう。」
いやいや、そんなわけない。仕事はあるはずだ。
常に持っている端末から今日の予定を確認すると、メールが入っていた。
『撫子からのお願いで今日はルークはお休みだよ。ゆっくりしてね。』
…うちのキングはクイーンの願いなら何でもいいんですかねー?
「わかったでしょ、ほら、食べて。ケーキもあるわよ。」
「撫子くんの手料理食べるなんてあとでキングに殺されますねー」
そんなことを言いながら食べる。
一口。また一口。美味しかった。
彼女はおめでとうとは言わなかった。
祝いの言葉はなぜか言わなかった。彼女ならいいそうなものなのに。
ただ、その料理には、その言葉と同じ感覚がした、そんな気がした。
Happy Birth Day Rain!!!
ええ、遅刻です。そんなの分かってました。だがしかしかわいいよレイン君…!!
シリアスっぽくしてみたんですがどうでしょう?
祝って欲しいと思えない、けど本当は思っているはずのレインをなんとなく見抜いて、おめでとう、とは言わない撫子。
代わりに料理にいっぱいの、溢れるほどの気持ちをこめて。